サシバの渡りと風 その1
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- サシバの渡りと風 その1 (webmaster, 2011-5-4 13:50)
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投稿日時 2011-5-4 13:50 | 最終変更
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サシバの渡りと風 その1 | ||||
タカ渡り観察グループ 池上 武比古 | ||||
タカ渡りの観察は、この春で4年目(秋は6年目)に入る。当初は「ハチクマやサシバが通るんだ」ということを確認して喜んでいたが、そのうち「なぜその日に飛ぶのか、どこを通るのか」とその飛行条件が気になってきた。 とりわけサシバはほとんどが滑翔で、ソアリングしながらサーマルを上り詰めて気持ちよさそうに滑り飛ぶ姿を見ていると、サーマルの所在が分かればルートが分かるのではないか、と大胆にも考えた。 ところが、HPで同様にサーマル頼りのパラグライダーパイロットたちの経験談、理論を知って、気象学関係の文献を読むと、サシバの飛行はサーマルの所在だけでなく季節風、局地風、海陸風、山谷風、山岳風など複雑な風も利用していることが分かってきた。 気象学の常識を適応すれば、サーマルの所在や、サシバのルートが分かるというものではないが、何らかの参考になるのではないかと考えて「サシバの渡りと風」について「ふれあい」で連載することにした。まずは、サシバの渡りの特性についてである。 雑誌「バーダー」が送られてくると、私が真っ先に読むのは、水谷高英さんの「Field Report」の挿絵。野鳥の観察風景をこのように切り取れたらいいなあ、といつも感心しているのだが、今年に入っての連載では、タカの渡りルートの考察に集中的に取り組むとか。○半島の先へ先へ 秋だけでなく春も、15年にわたるタカの渡りの観察からの見方は、私たちも大いに参考にさせていただいている(HP「TORINOE」、著書「野鳥フイールドノート(文一出版)」も同様)のだが、新年号では房総半島―大島-伊豆半島―伊良湖岬の渡りルートがあるのではないかとの大胆な仮説を披露している。思わず笑ってしまったのだが、気象やタカの習性との兼ね合いでは、これは充分に「あり」なのである。 「鳥の渡りを調べてみたら」(ポール・ケリンガー、文一出版)によれば、米国・ニューヨークの南、ケープメイ半島に来た渡り鳥は巨大な漏斗の先のケープメイ岬に集合する。そういえば、伊良湖岬もそうだ、タカだけでなく小鳥たちも半島の先へ先へと飛んで岬に集中する。 |
岬へ岬へと飛ぶのは習性だけではない、風があるからではなかろうか。○海陸風のサーマルに乗る 成田、羽田空港に着陸しようとする飛行機は、太平洋を房総半島の東から入ってくるが、着陸のアナウンスが流れるころ、半島の上を北から南へ雲が連なっているのに気がつくだろう。 これが房総半島の東京湾、太平洋沿いの両海岸から上がってくる海風(別に詳しく説明)が作る雲であり、雲ができるということは上昇気流(サーマル)がある、それが連なっていると、南を目指すサシバはそのサーマル・ストリートを滑翔する。 図は神奈川県立生命の星・地球博物館が作成した関東から静岡への「宙瞰図」である(博物館HPから入手できる)が、ランドサットから見た地球の姿はいろいろなことを気づかせてくれる。 例えば、房総半島の途中に西へ突き出ているのは富津岬や金谷であり、「先へ先へ」と飛ぶサシバはまずそこで房総半島を飛び出して三浦半島に行く。そこで北西に飛ばなかったサシバはさらに、半島の先端・館山にたどり着くだろう、その先には大島がある。 大島は相模灘に浮かぶ単独峰の島で、富士山と同じように一日中上昇気流が出て雲がかかっている、サシバはその気流を利用して上昇しさらに伊豆半島を目指す。なぜか、房総半島と同様に、伊豆半島では東西海岸からの海風でできたサーマルがあるからだ。 というのが、私の推測だが房総半島でサシバ観測は富津岬しかないので、それ以外は確かめられてはいないし、伊豆半島から先はどう飛ぶのかは読めない。 水谷さんは、伊良湖岬の観察の際、海上遠くにサシバのタカ柱が見えたことを、このルート推測の根拠にしているが、それは陸風によるサーマルの可能性が強いと思う。(次回は「春と秋とでは渡りルートが違う 気流が逆になるから当然のことだ」です) |
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【ランドサットから見た関東宙瞰図(神奈川生命の星・地球博物館作成)】 |
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