サシバの渡りと風 その6
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- サシバの渡りと風 その6 (webmaster, 2011-8-16 9:50)
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投稿日時 2011-8-16 9:50 | 最終変更
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サシバの渡りと風 その6 (海 陸 風) |
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タカ渡り観察グループ 池上 武比古 | ||||
○鎌倉周辺を通ったサシバはどこへ飛ぶのか われわれのタカ渡り観察のターゲットは、大山から南へ山稜続きで湘南平までの間を渡るタカの動向で、秋の観察の場合ルート想定に参考にできるのは、稲村ヶ崎など鎌倉・三浦半島での観察結果だけである。ただ、われわれとリンクしているのかが分かりにくい。 ○湘南台を通らないの? 「解」は海陸風?原因を探ろうと稲村ヶ崎のデータ、鎌倉を中心として長年サシバの渡りを観察している市来崎隆さんのHP「鎌倉山野鳥通信」などを眺めていると--①稲村ガ崎で観察するサシバの多くは、双眼鏡で見えるか見えないかの内陸遠くを飛んでいる。 ②逆に早朝に海上遠く南にタカ柱ができることがある。 ③鎌倉周辺でのサシバの渡りは午前中の早い時間に始まり、ほぼ午前中で終わる。 --という傾向があることが分かった。 この現象を説明する「解」はあるか? 気象関係、パラグライダー、湘南サーファーなどの専門書やHPを読みながらたどり着いた仮説は「海陸風」である。 海陸風循環について気象学の本の説明を列挙すると、陸地は暖まりやすく冷えやすい、逆に海面は暖まりにくく冷めにくいという特性があるので、日中に太陽の光が差し込むと、陸地の気温が上がり、海上はなかなか気温が上がらず、陸地と海上に気温差が発生する。 陸上では温められて空気は軽くなり気圧が下がる、海上は気温が上がらないために相対的に気圧は高くなり、こうして日中は海から陸に風が吹き、これを海風といい、海風はある程度のところまで侵入すると内陸の別系統の風とぶつかって、収束して上昇し、上昇気流は海に向かって流れ、海に流れた風は下降気流となって、全体として海陸風循環といわれる流れができる(図解参照)。 |
サーファーが昼近くの海風を計算に入れて待っているわけである。ただ、海陸風がよく見られるのは「風が弱く天気のいい日」に限られ、卓越する風が強いときは、その場の風が目立つようになる。 ○かぎは海風前線、陸風前線その上昇気流によって、通常は海岸から4,5キロのところに、海岸に沿って海風前線と呼ばれる現象が発生するのだが、そこでサーマルをつかめれば、サシバは一気に上昇、海岸沿いに高度高く飛べる。また、夜になって逆の陸風が発生すると、海岸から離れたところで海岸沿いに陸風前線が同様に発生するので、それが明け方に残っていれば、海上遠くにサシバのタカ柱ができるということではなかろうか。 これで、内陸深くサシバが飛んでいることや、海上のタカ柱現象が説明できる。 現に湘南平から稲村ガ崎、藤沢方向を見ていると、電波塔よりもはるかに高く一直線でサシバは飛んでくるが「あれ以上に飛ばれたら分からんよね」という高度なので、実際にはかなりの数のサシバは高度高く飛んでいるかもしれない。 見えないものの証明はできないのだが、仮に湘南平のはるか上を通り過ぎていたとしたら、その渡りが収束するところが気になる。それは中井のあたりだろうか。 ○複雑な関東平野の風ただ海陸風は厄介な問題を引き起こす。海風が入り込むのは海岸から4,5キロというのが定説だが、もっと入り込むことは、環状8号線に沿ってぽこぽこと積雲が並ぶ環八雲の現象を解明すると分かる。環八雲は風の弱い夏晴れの日に発生、その原因は相模灘からの海風と、鹿島灘からの海風がぶつかって収束して発生するとみられるからだ。私は当初、秦野で見えるサシバたちは、東京、横浜などの大都市を横断してきたのがメインではないかと推測してきた。それは東京大都市圏では巨大なサーマルが発生していると考えたのだが、パラグラの体験談では大都市圏は気流が安定しないので飛行を避けるという。さらに、このように海風が内陸深く、研究者よっては軽井沢あたりの山地にまで入り込んでいる(「局地風のいろいろ」成山堂書店)というのだから、秋の渡りを考えると海風は完全に逆風である。 局地風の研究によれば、関東平野の風は、風向がかなり乱れている。タカの渡りを考えると、東京大都市圏の飛行はサシバにとってはかなりきついようだ。とすると、秦野にはどこを飛んでくるのか、大都市圏を避けて周辺の三多摩経由なのか。 (次回は今後の課題)。 |
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【 海陸風 】 (海陸風“HPタマの気象学”から) |
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