2010年秋タカの渡り観察総括
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- 2010年秋タカの渡り観察総括 (gkd44239, 2010-11-15 9:58)
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投稿日時 2010-11-15 9:58 | 最終変更
gkd44239
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添付ファイルが有ります。
タカ渡り観察 2010年秋
ふれあい自然探鳥会 タカ渡り観察グループ 池上 武比古
2010年秋のタカ渡り観察を楽しく終えた。継続は力なり、とはよく言ったもので、2006年にスタートして、われわれもそれなりに成長したと言っていいのか、確認したサシバ数でいえば、2006年5羽、2007年8羽、2008年180羽、2009年220羽、そして今年290羽を越えた。万葉公園・矢倉岳のカウントが2千羽だから、特に根拠はないものの5百羽は見たいものだ、という私の目標は時間の問題?
確認数はサシバ291羽、ハチクマ21羽、ノスリ27羽、オオタカ7羽、ミサゴ、ツミ各5羽、チョウゲンボウ3羽、チゴハヤブサ2羽、ハイタカ1羽だった。これだけで、観察地周辺にいかに多様なタカがいるかが分かる。
ふれあいMLを通じて呼び掛けた17回の観察には平均7.2人が参加、2回のふれあい探鳥会には約80人が集まり、それなりに満足していただけたかと思う。見つかるタカは「点」だが、渡部さんの写真のように時には近くを飛ぶので、今後とも奮って参加してください。
サシバの確認数が増えたのは、習熟して同定力が増したからだ、と言いたいところだが、残念ながらそうではなさそう。まあ、言うならばタカを見つける勘所が多少分かってきたという程度で、まだまだ進化する余地はあると思う。桃栗3年柿8年タカ10年とは言っているが、われわれのレベルは桃栗3年、私の孫の3歳児程度かも知れない。
とりあえずは遠くの点を見つめながら、サシバ、ハチクマ、ノスリの区別がついてはきたのだが、目標としていた成鳥、幼鳥、雌雄の区別への挑戦はまだまだ道半ばです。
○通り道がだんだん降りてくる
今年の観察では、山越えをして来るサシバを捉えたいと思ったが、それは適わなかったようだ。タカが飛去する方向は分かりやすいのだが、どの方角から飛来してきたのかを判断するとしても、出現はいつも突然で、相も変わらず真上に出てきて慌てるということはしょっちゅうだから。
春の観察で山越えを難なくやっているということは分ったから、それはそれでいいのだが、今回新たに生じた問題は、菜の花台(標高600m)、権現山(同243m)、湘南平(同200m)と、日が経つにつれてタカの通り道が南下、高度が低下したこと。
「どうも分からん、権現山と菜の花台のどっちがいいんだ」と考えて、当初はできるだけ、両地点で観察したが、9月20日ごろまでは菜の花台の勝ち。9月25日の最初のピークからは、圧倒的に権現山で、26日にサシバ120羽を記録した日は、菜の花台は11羽だった。権現山の高原状態は10月当初まで続くのだが、それ以降はさっぱり。
ところが、権現山の南西の中井などでカウントできていると知って、朝令暮改、方針転換にはちゅうちょしないわれわれは、10月8日に初めて湘南平にアタックして、これが当たり! 以後湘南平と権現山の2点観察になった。
それにしても、時間とともにホークロードが降りてきたのはなぜか?タカにしてみれば、東のどこかでサーマルに乗って滑翔して飛んできたらそこだった、というだけのことで、彼らが想定する飛行バンドの中でのちょっとした違いかもしれないが、観察者にとっては悩みは深い。
悩み深いといえば、サシバが使うサーマルが日によって、時間によって違うこともそうだ。例えば権現山から見ていると、サーマルができる場所は6ヶ所ぐらいあるのだが、第一次ピークのときは、権現山上を通り過ぎたサシバは秦野市街への入り口のようなところでソアリングして、いつもサーマルのできる渋沢丘陵は高く通り過ぎて行く。困ったもんだ。
○海にサーマルができるの?
「いいじゃないの、湘南平は」と観察場所を湘南平に移して、にんまりしていたら、新たに問題が発生した。不遜にも「湘南平で居座れば、稲村ヶ崎を通ったサシバは一網打尽じゃ」と思っていたのだが、湘南平の結果は10月8日が32羽、11日が11羽と一見順調なものの、武山HPで見る稲村ヶ崎は100羽以上、さらに以降は稲村ヶ崎では順調に出ているのに、湘南平はゼロだった。
「これって、何なの?」 困ったときは先人の知恵に頼ろう、と湘南平でたまたま出会ったふれあいの先輩、25年間鎌倉・笛田公園などこの近辺でサシバ渡りの観察をしている市来崎隆さん(「鎌倉山野鳥通信」)、稲村ヶ崎の池秀夫さんに厚かましくもメールで聞くと、稲村ヶ崎を通り過ぎたタカはけっこう江ノ島沖を飛び、時にはタカ柱ができていたとか。
海に飛ばれると、本当に見つけにくいのだが、しかし、海にサーマルができるのかと、はたと考え込んだ。通常サーマルとは、太陽光線によって暖められたある区域が、周りとの温度差が2度になると発生する、と教科書に沿って理解していたが、ミクロ的に見て海面にそのような温度差が発生するのか? それとも、陸上のサーマルが風に流されて沖合いに飛んだのか。
気象学の本をいくら読んでも、このような微細な場所の問題には言及していないので、大磯海岸でライズアップしていたモーターグライダーの人に、機会があれば聞いてみましょう。
○秋もいいカップル?
春の観察の楽しみの一つは、ノスリ、ハチクマのディスプレイで、ちょうど舞台を踊りながら幕間に消えてゆくように、西から出てきて急上昇、急降下を4度ぐらい繰り返して、東に飛去する。笑ってしまう三文役者ぶりだが、それでは飛去したのか、となるとまたまた出てくるので、果たして「渡り」とカウントするか、いつも迷った。
どの世界も雄は大変だ、雌のご機嫌取りに腐心している、と自らに引き寄せて同情しているが、繁殖期の春ならディスプレイは理解できるものの、秋もやっている。よく分からん、繁殖期は終えたはずなのに雌雄一緒に行動して、相も変わらず雄は雌をつなぎとめるのに腐心しているのかと考え、タカ仲間を介して専門家に意見を聞いてもらった。
その方によると「ハチクマの非繁殖期は、雌雄バラバラに生活しているように見えて、実はお互いの存在を意識しながら近くで暮らしているのではないか、つがいの関係は冬の間も続いていると考えたほうが自然で、浮気相手に連れ合いを奪われないためにディスプレイ飛行も大切なのではないか」という話だった。また、野鳥カメラマンは同様の見解に立って「言われてみると繁殖したつがいは案外近くにいるかもしれないと思えることがあった。ここでも成鳥、幼鳥の区別がポイントになりそう」ということだった。
「もうサシバは出ないよね」と考えて、10月中旬に観察をやめたが、ご苦労なことに白樺峠では寒い中でも観察は続き、500羽近いノスリの渡り記録している。われわれが「あんなに出たり入ったりしているようでは、渡りではないな」とみたノスリたちも、つがいで渡って行ったのかもしれない。
まだまだ、タカの生態は研究されてはいないようで、観察をするたびに面白いことに気がつくようだ。
(了)
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