2011年春タカの渡り観察総括
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- 2011年春タカの渡り観察総括 (avocet, 2011-8-17 9:51)
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投稿日時 2011-8-17 9:51 | 最終変更
avocet
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2011年春、秦野市・菜の花台のタカ渡り観察記
ふれあい自然探鳥会、タカ渡り観察グループ 池上 武比古
「何だありゃ、南斜面から飛び出したのはサシバじゃないの」と騒いでいたら、「上っ、上っ」と叫ぶ女史の声。見上げれば、いつの間に来たんだといいたくなるようなサシバの柱に大騒ぎである。「ちょっと待て、あれはサシバでもノスリでもハチクマでもない、クマタカだ」と、いつもは同定に遅れをとるIが自身ありげに断定したが、周りは半信半疑に聞き流していた。
○菜の花台はサシバ通過ルート
3月下旬から秦野市・菜の花台で始めたタカ渡り観察会は5月下旬まで、ふれあいMLを通じて呼び掛けたのが26回、自発的な観察を合わせると32回、毎回こんな感じでにぎやかに楽しく過ごした。
今年のサシバ・カウントは170羽に迫った、昨年は140羽弱だったから、大幅に増えたことになるが、その増加よりも、菜の花台がサシバの通過ルートであることが確かめられたことが大きい。なぜなら、一昨年の結果が14羽だったので、当の本人たちが昨年の140羽弱の結果に半信半疑だったからだ(詳しくはふれあい自然探鳥会HPの「タカ渡り観察の部屋」「フォーラム」をご覧になってください)。
われわれの観察は.瓮鵐弌爾僚擦泙い遠隔地のため毎日の調査はできない観察始動が午前9時と遅い始動が早朝のため観察に集中できるのは遅くて午後2時まで−という制約があるので、定量的な結果は示せない。
もし、白樺峠のように毎日、朝から夕までやれば、結果は2倍以上になるかもしれない。しかし、方向性ぐらいは分かるかな、と思うが、この春の増加の原因は、錬度が上がったこともあるけれど、なんと言っても熱心な女性3人の頑張りのおかげでしょう。男はぐだぐだ言っても根気は続かないが、女性はすごい、ひたすら双眼鏡をのぞいていて、脱帽である。ただ、双眼鏡で見えるか見えないかという遠い点のタカを見つけるので、不明種75羽というおまけの記録も付いているが・・。
○春は山寄り
タカ渡り観察の狙いはそのルートを探ることにもあるが、春の170羽の記録は、そのヒントにもなる。というのは、昨秋に菜の花、権現山などでサシバ300羽弱を記録しているが、面白いのは春のカウントがその三分の二に迫っていることである。
昨秋は菜の花台(標高550m)、権現山(242m)、湘南平(180m)と順次高度を下げ南へ観測点を移した。その方が効果的に観測できたからだが、この春は菜の花台に絞り込んだ。権現山と同時観察をしても、菜の花台の方が有利であったからだ。
このことからも、春の渡りルートは丹沢山塊寄りであることが明白で、秋に観測点が分かれるのは、それだけ東でサーマルが発生する場所が分散化していて、春は逆に西のどこかに集中しているのかもしれない。
春のサシバはどこでサーマルに乗っているのか、と何度も展望台から富士山方向を眺めているのだが分からない。ただ、お天気のいい日は、高松山南の鞍部、矢倉岳の延長上に愛鷹山、十里木高原が見え、なんとなくその方向から来てそうな気がする。
○どこを飛んできたのか、ハチクマ
サシバは順調だったが、ハチクマは26羽と昨年を下回っただけでなく、出方が奇妙だ。ハチクマは主に瀬戸内海沿いに東行するとみられているが、広島などハチクマがメインの観測地では、毎日0行進なのに、4月中旬から菜の花台では姿を見せていた。
ところが、5月半ばになって、広島では毎日500羽の記録が出ても、菜の花台では0であった。春では希少な観測仲間、静岡・平山林道に独りで観察していた田島義之さん(HP「鷹の渡り静岡」)に相談すると「いやー、ハチクマは遠い、高い。雲の中を流れるように飛んで、首の形から何とか同定できた」という。田島さんの武器はダブルスコープ(スコープの双眼鏡)、それでやっと見つけることができるというのは、この時期は高高度に滑り出せれるサーマルができていたということなのか。
○ノスリは何をしてるの?
渡りの観察は、春なら西から東へ飛んでいるのをカウントするのだが、扱いに困るのがノスリ。一直線に飛ぶのは稀で、大半は戯れている。ピーヨピーヨと鳴きながら、バットマンのような突撃スタイルで急降下、急上昇を繰り返していた。
動物界では、このような派手な動きをするのは雄と相場は決まっているから、近くに雌がいるということか、ならばここで番となって営巣するのか、ということになるが、シーズンが終わると彼らの姿はない。ということは、営巣する場所までの新婚旅行のようなものなのか、とも考えられるが、あるとき菜の花台の周りに6羽のノスリが同時に戯れていたのを思うと、番・縄張り意識が緩いのかもしれない。
多い日は20回近く現れ、周りを飛び回り、何とか実数を割り出して渡りとカウントしたが、それでは多すぎる。ならば、東行き個体だけを渡りにするか、と変更したが、春のシーズンが過ぎると、あれほど飛び回っていたノスリはきれいさっぱりといなくなるから「やっぱりあいつらは渡りなのか」と迷ってばかりである。
サシバの渡りは単純明快、時期的には雄、雌、若鳥の順で渡り、単独行動のようにみえる。一方ノスリも、両羽ぱっちんのディスプレイするハチクマも、飛翔能力に長けている余裕なのか、随分のんびりしている。が、要するに何をしようとしているのかが、いまだに分からない。観察続けるほどに分からないことが増えてくるようだ。
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