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タカの渡り記録

サシバの渡りと風 その2

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  • なし サシバの渡りと風 その2 (webmaster, 2011-5-4 13:50)

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webmaster

なし サシバの渡りと風 その2

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2011-5-4 13:50 | 最終変更
webmaster  管理人   投稿数: 142
  サシバの渡りと風 その2
(秋と春、風が違えばルートも違う)
 
  タカ渡り観察グループ 池上 武比古  
 
○春は秋の十分の一以下
 2006年秋から始めたタカ渡りの観察も目鼻がついてきた2008年、グループ内から「春もやろうよ」という声がでてきた。「THE FOOL ON THE HILL」、「岡の上のおばかさん」(ビートルズ)である。サシバが飛べば歓声を上げ、飛ばなきゃ「明日がある」と言い、晴れるとじっとしておれず丘の上で一日空を見上げる、立派なサシバ病にかかってしまったのである。
しかし、関東を見渡せば個人はともかくグループで観察に取り組んでいるのはHP「タカ渡り全国ネットワーク」で探しても見当たらず、近辺でようやくたどり着いたのが90年代に愛知県・伊良湖岬で5年間(93-97年)行った調査結果(「タカの渡り 2000」タカの渡り全国集会 in信州2000実行委員会編)だけだった。
しかし、その結果はサシバで平均して500羽程度で、秋の渡りの10分の1以下、「どういうことだろう」と頭を抱えてしまった。
○春のルート、秋とはほとんど別
 渡るタカに衛星で受信する発信機を装着して航跡を調べる先駆者、樋口広芳東大教授の口癖は「サシバは何丁目何番地何号までも正確に戻ってくる」である。このことから、サシバの頭には地形図が入っている。そうだとすると太平洋岸沿いに戻るサシバは当然富士山を認識しているだろうから、秋の航跡をたどって春は戻ってくるのかな、と当初は考えた。
ところが樋口著「鳥たちの旅 渡り鳥の衛星追跡」によれば、違うのである、戻り先「番地、号」は正確ではあるが、途中となると秋には山脈の東を飛べば、春は西という具合である(図参照)。
当初は「ふーん」としか思わなかったのだが、サーマルや季節風を考えるうちに「そうだ、春と秋は風が違うからルートが違うのだ」ということに気がついた。
○春はどこを飛んでいるの?
 伊良湖岬ではサシバの「半島を先に先に飛ぶ」(前述)習性と、海風のサーマル・ストリートがあるから、秋に1万羽前後集中するのは充分推測できる。しかし、春となると、志摩半島に飛んできたサシバは、そういう好条件はないので、伊良湖岬を目指すこともなく、他の道を探すだろう。
1万羽ほどのサシバが飛び、いまやタカ渡り観察のメッカのようになっている白樺峠も、雪が残って春観察はできないが、仮に実施しても伊良湖岬と同様の結果になるだろう。
   なぜなら、「雲と風を読む」(中村和郎、岩波)によれば、松本平には姫川、千曲川、釜無川、木曽川などに沿った谷を通って風が集まる「卓越風」が存在するという。その風の吹き出しとなって白樺峠から乗鞍岳にかけて壮大な谷風が発生する、それであのような陸続とした渡りが現出するのではなかろうか。
しかし逆に、白樺峠には春にそのような好条件は見当たらない。それじゃ、どこを飛ぶのかとなるが、分からない。
白樺峠にしても、秋のルート解明が多少なりともできているとするなら、それは先輩たちの努力の結果で、春は春で別の場所で同じ試みをするしかないだろう。
○春は急ぐんです!
 春観察を始める前に、これまでの目撃例をさがすと「単独行が多く、高度が低い」という見方が多かった。実際、菜の花台で見ていると、われわれの眼の高さ600mあたりを飛ぶのが多い。サシバの滑翔を見慣れたわれわれからは「おいおい、サシバが羽ばたいているよ」という声が出たように、かなりお急ぎのようだった。
昨春に菜の花台などで観察できたサシバ140羽のうち、このような単独飛びは110羽だった。この単独行が春の観察を難しくさせているのかもしれないが、しかし秋のようにサーマルで上昇して滑翔するタカ柱も出る。
「春もタカ柱ができるんだ、白樺峠でもこんなに近い柱は見られない」と昨春4月上旬、仲間から驚きの声が上がったが、都合5回タカ柱を確認した。  
樋口著によれば、秋のサシバ渡り日数は平均35日、春は23日である。しかし、飛翔力の弱いサシバが、秋よりも早く目的地に着くのに、羽ばたいてばかりはおれない、春は秋以上に必死のサーマル探しをしているはずである。
秦野市周辺でのわれわれの観察では、他の観察地に比べると確認数は極めてマイナーではあるが、サシバは秋が300羽、春は140羽だから、春観察の歩留まりはいいし、幸いにもそれなりにルートであることが実証されたといえる。
ただ、春観察でのカウント数が少ないのは、なぜか、前述したようにルートが変わっていることもあろうが、余程見えない高度をひたすら滑空しているのだろうか、秋以上に春観察は分からないことが多い。
(次回は「サーマルについて」です)
 
  【サシバ同一固体の渡り経路(□は秋、○は春) 樋口著「鳥たちの旅」から】

 サシバ同一固体の渡り経路
 
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