サシバの渡りと風 その4
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- サシバの渡りと風 その4 (webmaster, 2011-5-9 21:40)
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投稿日時 2011-5-9 21:40 | 最終変更
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サシバの渡りと風 その4 (サーマルを探すには) |
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タカ渡り観察グループ 池上 武比古 | ||||
パラグライダーの人たちは、飛行に必須の条件であるサーマルの所在を、積雲(綿雲)を見ながら探しているようだが、われわれタカ・ウォッチャーからすると、積雲があっても、それが観察場所からかなり離れたところなら渡りを確認しようがないし、ましてやサシバの通り道から離れているのなら、気象条件がよくなっていることが分かる程度の意味しかない。○グーグル・アースで見当をつけよう よって、サシバがどこを通るのかを探るには、まずはグーグル・アースで「森の中のビール工場」のような、サーマルの発生しやすい地形を探すことだが、さらにサーマルが発生しやすい気象条件が分かれば、観察しやすくなるというものだ。 前号で触れたように、サーマルが発生するのは、回りとの「温度差2℃」ができる気象条件がカギとなる。それを、春の観察のサシバの観察体験から探ってみる。○順風でも強風では駄目 なぜ、サシバかというと、ノスリやハチクマは飛翔力にすぐれているのだろう、何度もアップダウンを繰り返すディスプレイをやる余裕があって飛翔能力が高いのに、サシバは遊ぶ余裕はなく、滑翔出来ないときはいかにもきつそうに必死に羽ばたいているからだ。サシバにとってはサーマルの存在は渡りの絶対必要条件とみられる。 サーマルができる条件は、第一に風は穏やかであること。例えば、春秋を問わず、サシバの渡り観察には、寒冷前線などの雨が通り過ぎた後がいい、という経験則があるが、雨の翌日に「晴れたぞ」と勇んで菜の花台に行ってみてがっかりすることがある。 それは、前線が通り過ぎても翌日まで強風が残っているからで、風力4(6m前後)の風があれば、「回りとの温度差2℃」という暖気団は形成前に吹き飛ばされてしまうだろう。 観察では、渡る方向に順風か、それとも逆風かと気にするが、仮に順風であっても、風力4程度の風になると気流が乱れ、強風のためサーマルが発生しない。 サシバもサーマルを利用して上昇できないとなると「仕方がないこのまま飛ぶか」と、菜の花台の目の前600mの高さをばたばたとしながら、飛ぶことになる。 ○春はサーマルができにくい?春観察を始める前に、春のサシバはどのような飛び方をしているのか、いろんな方の経験を尋ねたら「高度が低いのではないか」という見方が多かった。しかし、春観察を通しで2年やってみると、確かに高度が低いサシバが多いが、それは、単に秋に比べると春はそれだけサーマルが発生しにくくなっていることに原因があるようだ。「女心と秋の空」と言われるように、秋の天気は変わりやすいが、この春の体験では「春はもっと不安定」のようで、寒気団の存在がいたずらしているのか、天気予報は外れっぱなしだったし、気温も不安定で、サーマルができにくい状態であったことを体験した。 |
それがどうしてそうなるのか、はこれから気象学的なお勉強をしなければいけない。 雨の翌日、風が穏やかで(風向は問わない)朝から温度が上昇していると「サシバ日和だな」とにんまりする。朝の温度は低くてもかまわない、要するにどこまで温度が上がるかである。これが第二の条件。○急な気温上昇がベスト 温度が上がってくると、われわれが渡りの指標としているカラスの動きが活発化し、トビが漂い、ツバメが交差すると、これは菜の花台にサーマルができ始めている前段階であることを告げている。 といっても、菜の花台で発生するサーマルは、その場所で暖められた暖気団が上昇しているのではない。菜の花台は大山からの山稜が象の鼻のように西に突き出した形だから、最初は東面、太陽が上がるにしたがって南、西の斜面順番に温められ、それで発生する斜面傾斜風が合成したものとみられる。 朝から温度が上昇して、カラス・トビ・ツバメの3指標がそろい始めたころだと、まだ温度は低いので飛び出したサシバがいても、われわれの目の前をあえぐように羽ばたいて水平に流れる。 さらに温度が上がると、サシバは斜面傾斜風に乗って西の山麓から浮上し、われわれの頭上の望楼の上、標高800メートルあたりまでソアリングで上昇、トップスピンして気持ちよさそうに東に流れてゆく。 ところが時にサシバ、ハチクマは一気に望楼の上高く千メートルぐらいに突然現れ「なんだありゃ」とわれわれを慌てさせる。○別のサーマルはどこで発生したの? どうも、気象条件によっては、菜の花台よりも高くリフトするサーマルが西の方に発生していて、そこから流れてきたようだ。「それはどこだ」と望楼の上に登って見ているのだが、なんとなく推測はつくけれど、現認はできない。これはグーグル・アースで探して実際に現地で調べるしかない。 (次回は「斜面傾斜風、谷風」) |
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【 観察会風景 】 |
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